「オオコワ」と鳴くカラス
カラスオケ
申し合わせたような結果になった。
2勝2敗1引き分け。
最後の全羽出場のカラスオケ大会で決着することになった。
ルールは15羽が一列に並び、
人間の前で「カラスの歌」を合唱する。
無事、
3回繰り返し歌えたら勝ちとなる。
ここでカラスの歌を紹介したいところだが、
「カラスの歌が聞こえてくるよ……」
これは「かえるの合唱」の替え歌で著作権何某の規約があるという。
元々、カラスの歌だと主張しても証拠がない。
口承曲の弱いところだ。
したがって、
後はご想像におまかせする。
ともかくこの歌を全羽で合唱するのだ。
場所は一番危険な小学生の通学路。
両チームが通学路を挟んで一列に整列した。
この状態がまず異常だ。
カラスが列を作って並んでいるのは、
石をぶつけてくれといっているようなものだ。
しかし、
怖いからといって1羽だけが速く歌うわけにはいかない。
合唱だから。
左手から集団登校の一団がやってきた。
ボスが「ガー」と合図をおくった。
30羽が一斉に歌いだした。
ここで意外な展開がみられた。
山カラスの5羽が、
すばらしいハーモニーを見せたのだ。
後で聞いてみると、
山カラスの縄張りの、
南端の山の麓にカラオケ店が1軒ある。
そこから毎晩、
カラオケの音が聞こえてくる。
たまにプロの歌手が歌っているときもあるという。
山カラス達は、
毎晩その音に合わせて歌っているのだという。
うまいわけだ。
子供達も、
この山カラスの声があまりにも良いものだから、
足を止めて聞き出した。
しかし、
この競技は子供達を感動させた方が勝ちというものではない。
3回、歌を歌いきるかどうかというルールだ。
私は悪い予感がした。
子供達の一団をみていたアホガラスが、
いきなり
「アホ」
と鳴いた。
以前、「アホ」と鳴いたとき、
激怒して石を投げつけたあの男の子がいたのだ。
アホカラスはその顔を覚えていた。
こんな時にと思ったが、
もう後の祭り。
その子もあの時のことを思い出したのだろう、
小石を探そうとしたが、
この辺りは舗装されていて石が見つからない。
見つからないと、
よけい人は興奮する。
背負っていたリュックサック(注:ここの小学校はランドセルではなく、
リュックサックで登校している)を下ろし、
それを振り回しながらアホカラスに近づいた。
そして、投げつけたものだから、
隣にいた私と、長老、若カラスの3羽も巻き添えをくった。
あとの11羽も驚いて飛び上がる。
合唱どころではなくなった。
漁師町チームは反対側にいたので、
この騒ぎの間にきっちり3回歌い終わって飛び去った。
1時間後、
公園に30羽のカラスが集まった。
私は代表として、
ボスに負けを宣言し、
駅の西側の縄張りは漁師町に譲ることを認めた。
しかし、ボスの返事は意外だった。
漁師町のカラスは山が嫌いだという。
山はミミズクやタカが住んでいるので、
いつ襲われるかわからない。
それに比べて、
漁師町は餌が豊富で、
人間が敵から守ってくれる。
縄張りを増やしたところで、
そちらで住みたいというカラスはいないという。
それで、縄張りは譲るというのである。
それじゃあ、
なぜカラスンピックに参加したのかと聞くと、
最近は楽に暮らせるものだから、
どのカラスも運動不足で肥満状態だ。
他のカラスとの抗争もずいぶんなかった。
この機会に、
気分転換をしたかったという。
駅の西側の開発は徐々に進んでいる。
山カラスとは話し合いで、
この辺りを緩衝地帯とすることにした。
将来は難民カラス、渡りカラスの受け入れも検討している。
くま邦彦:作文家 / 2024/12/17 改稿