「オオコワ」と鳴くカラス
糞で固めろ
(念のために言っておくが、「糞で」と「踏んで」のかけ言葉である)
ここまで1勝2敗1引き分け。
この種目は我々が出したもので勝算があった。
まず、ルールを説明しよう。
カラスの世界では、話に困ったら「糞」を出せとよく言われる。
この言葉でカラスは食らいつく。
場所は縄張りの境界、
公園横の道路にあるマンホールの蓋である。
1時間以内に、
この蓋の上に糞を高く積み上げた方が勝ちとなる。
例によって、糞を集めてくる場所の制限はない。
先に勝算があるといったのは、
我々の縄張り内に、
牧場と養鶏場がある。
ここに行けば、
糞はたっぷりと手に入る。
場所の制限はしていないので、
なにも不正をしているわけではない。
情報を多くもっているだけだ。
「糞《くそ》でかためろ」、
いや「うそでかためろ」というつもりではない。
聞かれたら教えてやるつもりだ。
出場は老カラス、中年カラス、山カラスの3羽。
スタートの合図は私がとる。
「ガー」
3羽は予定通り、
牧場を目指して飛んだ。
ここには乳牛が20頭飼われている。
牛糞はたっぷりある。
ただ、かなり重いので、
1度にどれだけ運べるかが腕の見せ所となる。
残念なことにカラスに腕はない。
では何を見せ所とするのか。
老カラスがコンビニの店先で、
ビニール袋を3つ拾ってきた。
ここに牛糞を入れろという。
中年カラスと山カラスは、
牛糞をくわえようとするが、
大きな塊のため嘴で挟めない。
そこで、糞と糞の間に嘴を差し込み、
てこの原理でしゃくってみた。
ゆっくりと糞がめくり取られる。
それを転がしながら袋へ運ぶ。
3個の塊が袋に入った。
老カラスは、
手提げの部分をくわえてあげてみた。
かなり重い。
今度は、首を手提げの部分に通して羽ばたいてみた。
なんとか浮上できそうだ。
残りの2つの袋にも、
牛糞を転がして入れた。
3羽は、
5分ほどかけて、公園横のマンホールの蓋にたどり着いた。
袋から糞を取り出すと、蓋に乗せた。
高く積むためには、底を安定させなければならない。
糞の塊6個を亀の甲羅形に置いた。
老カラスはひょいと上に乗り、
足で糞を踏み始めた。
「カラスの足跡」通り、
一度や二度では細い線が入るだけだ。
これでは糞が安定しない。
糞と糞がくっつくまで
《《踏んで固める》》
必要がある。
老カラスは、
自分はこうして踏み続けるから、
牛糞を取って来るように2羽に指示をした。
往復10分、
糞を入れるのに3分。
あと3回は運べる計算だ。
残り時間がわずかになった。
マンホールの上には、
80㎝ほどの高さの立派な糞の山が完成した。
遠目には、
葛飾北斎のこげ茶富士を思わせる、
するどい傾斜とこげ茶色。
隣の漁師町チームを見ると、
糞はわずか20㎝足らず。
圧勝だった。
くま邦彦:作文家 / 2024/12/17 改稿