「オオコワ」と鳴くカラス
パトホッホ
 雷ショックで三種目目の競技は一週間のびた。 雷に打たれたカラスも元気に復帰している。 今回は駅前の広場が競技場所になる。 駅前ではお決まりのように、 ハトの奴が大手を振って歩いている。 歩いているといっても、 我々カラスから言わせるとあの歩き方は邪道だ。
 なぜかというと、 ハトは足と同時に首も振って歩くからだ。 人間はそんな歩き方をしない。 桐生祥秀が頭を振って走ったら、 九秒台など絶対に出ない。
 我々カラスの歩き方が正道なのだ。
(代筆者から「カラスはあらゆる鳥の歩き方ができるので、 烏なんだ」という訳のわからない注あり)
 今回のルールはハトの餌を奪う。 カラスが最も得意とする略奪だ。 しかし、 これだけでは面白みがないので、 うばった餌を、 広場のすぐ横にある、 交番に止めてあるパトカーの屋根に置くことにする。
 一時間後、 屋根に残っている餌の量が多い方が勝ちとなる。
「ガー」と漁師町のボスの合図があった。
 今回、我々のチームは若カラス三羽が出場。 どけどけとハトを蹴散らかし、 餌を奪ってパトカーの屋根に置く。 実に簡単な競技だった。
 しばらくすると、 近くで遊んでいた子供たちがカラスに気づいた。 子供の目には、 カラスがハトをいじめているように見えたのだろう。 近寄ってきて、 カラスを蹴ろうとした。 当然、カラスはよける。 よけられると子供たちはよけいに腹が立つ。 どこからか、棒切れを見つけてきた奴がいる。 今度はそれで殴ろうとする。
 出場カラスたちは、 それを避けながら餌を取ることになった。
余計な手間が増えた。
 交番の中にいた警官が、 窓の外を行ったり来たりするカラスに気がついた。 外に出てみると、 カラスたちがせっせ、せっせと、 ゴミ(実は餌なのだが)をパトカーの屋根に運んでいる。
「コラー」
と威嚇し、 トランクから大きなほうきを取り出した。 そして、 これまでにたまっていた屋根のゴミをすべて掃き落した。
 カラスたちは、 子供たちの攻撃をかわしながら餌を取り、 警官を避けてパトカーの屋根に餌を置き、 それを警官が掃き落す。
 最初考えていたよりずっとハードなゲームとなった。
 この繰り返しを、 延々と続いていた時、 急に警官が、 左胸につけていた無線機を取り、 何やらしゃべっている。
 と同時に、 交番の中から三人の警官が飛び出してきた。 緊急事態が発生したようだ。 二人ずつが、 それぞれ二台のパトカーに乗り込み、 エンジンをかけた。 そして、回転灯を点け、 けたたましいサイレン音を鳴り響かして、 出動した。
 パトカーがいなくなり、 競技続行不能で引き分けとなった。
くま邦彦:作文家 / 2024/12/17 改稿
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