「オオコワ」と鳴くカラス
ハンガー・ゲーム
 二種目目の競技は我々の出した種目だ。 なんとしても勝ちたい。
 こちらは年寄りカラスB、 若カラスC、 山カラス、 すべてメスの出場となった。
 タイトルについては、 映画ファンはいろんな期待をしていると思うが、 最初に断ったように、 カラスリンピックは命をかけた競技ではない。
(ところが、実際は思ってもみなかった事態が起こった)
 ルールは、 一時間以内に軒下やベランダにかけられた洗濯物から、 ハンガーだけを抜き取り、 電線にぶら下げる。 その数の多い方が勝ちとなる。
 ぶら下げる電柱は、 あのムクが来襲した公園近くの電柱とし、 ハンガーを探す範囲は、 どこでもいいことにした。
 遠くに行けば、 往復に時間がかかるので、 制限の必要はないと考えたからだ。
 スタートは、 洗濯物が乾いた頃、 二時とした。
 ちゃんと、人間に迷惑をかけない時間帯を考えている。
(「それなら、止めろ」と初老の男が水をさす)
 電柱にとまった六羽のカラスは、 儂の合図を待った。 儂は漁師町のボスの真似をして「ガー」と鳴いた。
 儂らの三羽は作戦を立てていた。 ハンガーから、洗濯物をいかに早く外すかが、 決め手だと考えた。 これは一羽では無理。 二羽が洗濯物を持ち上げ、 その瞬間に、 あとの一羽がハンガーを抜き取る、 という方法だ。
 慣れてくると、スビートもどんどん上がってきた。
 三十分を過ぎた頃、 電線に並べられたハンガーの数は、 儂らが五十本。
漁師町は二十本。
 このままいけば間違いなく勝てる。
 四十分を過ぎた頃、 急に天候が悪くなってきた。 雨雲が空を覆ったかと思うと、 すぐに大粒の雨が落ちてきた。 ゲリラ豪雨である。 悪いことに雷も鳴り始めた。 カラスは雷に弱い。
 あと二十分、 何とかもってくれと願いつつ、 競技の進行を見守った。
 残り五分、 儂らはおよそ八十本、
漁師町は五十本。
 その時、 ピカーッと光ったかとおもうと
「ゴロゴロゴロ、ドーン」
大きな音を立て電柱に雷が落ちた。 同時に電線が大きく揺れ、 両チームのハンガーがふき飛ばされた。
 よく見ると、 クルクルクルと1本のハンガーが電線の上で回転している。 儂らのチームのハンガーだ。 これを見た漁師町カラスの一羽が、 飛び散ったハンガーを嘴でくわえると、 電線に戻そうと飛び上がった。
 電線近くまで寄った時、 また雷が電柱に落ちた。
近寄ったカラスは、 ハンガーをくわえたままはじき飛ばされ、 儂らのチームの電線にぶつかった。 そのはずみで残っていた一本のハンガーが落ちた。
 漁師町カラスの反則でわがチームの勝ちとなった。
 かわいそうに雷に打たれたカラスは、 その後、一週間寝込むことになった。
くま邦彦:作文家 / 2024/12/17 改稿
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