「オオコワ」と鳴くカラス
プロローグ
気がついたら、自分はカラスだった。気がついたらというのは今まで気を失っていたとかそういうことではなく、自分がカラスだと自覚できるだけの能力が身についたということだ。
それまでは、周りのカラスと一緒にゴミをあさり、カァカァ(実はこの鳴声には異論があるが、今ここでそんな微妙な違いを論じることはやめておく)と鳴いていたのだが、
ある日を境に、儂は「オオコワ」と、どのカラスも真似のできない鳴声を発することができるようになった。
と同時に、人間に劣るとも優らない能力を身につけたのだ。
この話を書いているのは、後に出てくる初老の男で儂の代筆者である。カラスは文字が書けない。
儂は、この自伝ともいえる話のタイトルを「儂はカラスである」とすると言ったら、
この初老の男は、文豪の書いた小説のタイトルに似ているのでだめだという。
名のない猫よりも、「オオコワ」という名をもった儂の方が偉いと言ったが聞き入れない。気の小さい男だ。
もう一つ断っておく。自分のことを「儂」と難解な漢字で書いているが、
「わし」とか「ワシ」にすると、宿敵トンビの仲間のワシと勘違いされる恐れがあるからで、以後ふりがなは打たないので覚えて欲しい。
「儂」
くま邦彦:作文家 / 2024/12/17 改稿